未来に向かって 3
自宅に帰り着いたのは、夜の十一時をすぎていました。
連絡を受けて、東京の長男と夫の兄、そして会社の上司の方々も何人か来ておられました。
家のなかはシーンとして、夫の顔には白い布がかけられていました。
それをめくって、手を合わせました。
夫は眠っているような静かな顔でした。
私はこぼれる涙をジッとこらえました。
夫が死んだなんてとても信じられません。
でも受けとめなければならないあまりにも悲惨な事実が、私の目の前にありました。
警察医の死体検案書によれば、夫の直接の死因は心筋梗塞でした。
「年老いた両親がいて、しかも子どもが小さかったときは必死で働いたものだけど、二人の息子も成人したいま、私たちももう若くないのだから、あくせくしないで少しゆとりをもって自分を大事にしましょう。
たまには二人で旅行でもしましょうよ」と話し合っていた矢先のことです。
近年平均寿命は七十五歳と言われているのに、わずか五十四歳で一生を終えてしまうとは、あまりにも早すぎます。
息子たちの嫁さんや孫の顔も見たかったでしょう。
そう思うと残念でしかたありません。
二日後、あわただしくお葬式がすんでしまい、なんだかボンヤリしておりました。
たしかに五十四歳で、というのはあまりにも短い一生だったように思います。